同じ地域の建築家仲間が集まり定期的に街歩きを楽しんでいる。
東京の街歩きには永井荷風、種村季弘、川本三郎と先達が多いが、なかでも荷風さんのそれはリズムが良く背筋が伸びて、いまにも軽やかな下駄の音が聞こえるようで好きだ。
「裏道を行こう、横道を歩もう。かくの如き私が好んで日和下駄をカラカラ鳴らして行く裏通りにはきまって淫祠がある。」
日和下駄の第二章の冒頭である。荷風さんの視線は淫祠から樹、地図、寺、水附渡舟、路地、閑地、崖、坂、夕陽附富士眺望と見事に街歩きの楽しさをとらえていく。種村さんと川本さんはこれに夕方の居酒屋を加えるが大賛成である。街への興味は愛着に変わる。それが地道な街造りにつながれば素敵だ。
(2011年4月)