vol.007「小さな家」

絵本の話ではない、僕がつくりたい家のことだ。

あまりぜいたくは言えないが敷地は大きめが良い。ぎりぎりの敷地に目一杯建てると、家がどんなに良くても長持ちしない。次の世代が、そしてその次の世代も継いでくれる家にするには、手入れがよくできるように十分なゆとりが必要だ。

木造平屋が良い。ゆとりのある軸組に深い庇をかける。外壁は建て主の好みで良いが、落ち着いた色のオーソドックスな素材が良いだろう。薄いボードで軸組の両面を覆った外壁ではなく、中身の詰まった壁を作りたい。暖冷房の熱を蓄熱するような壁が理想的だ。

居間はあまり大きくなくて良い。小さな居間でも床面が広く見えるように小振りなソファと4人掛けの食卓。自分の席に座ると日常生活の必需品すべてに手が届くようなレイアウトにする。

台所は庭が見える南側に設けたい。一番南は庭に開いた大きな窓に面した家事テーブルにする。台所の北側は外壁を断熱しない食品庫にして、壁を断熱しないで室温が北側の外気温に追随するようにする。暖房の効いた住宅ではなんでも冷蔵庫に入れなければならないが、ひんやりした食品庫があればお節料理が傷まないし、冷蔵庫に入れるほどではない野菜も長持ちするだろう。

寝室は居間の隣に配置する。ダブルベッドに小さな椅子、ウォークインクローゼット。トイレやお風呂は玄関側と寝室から入れると便利だ。玄関-台所-食卓-居間-寝室-水廻り-玄関とぐるぐる回るプランニング。

とても大切なポイントがある。ホテルのシングルルームのような機能的なゲストルームを作りたい。小さな家には分不相応とも言えるが、家が継がれるために大切なことだと考えている。家族は変化する。都会では数世代が同じ家で生活を続ける昔ながらの大きな家族スタイルは難しい。若い頃に大きな家をつくると子供たちが独立した後に物置部屋を子供の数だけ抱えることになってしまう。都会の若い世帯は貸家で良いと思う。子供たちが独立したら、友人や子供たちが泊まれるゲストルームがある二人だけの小さな家をつくるのだ。そこに留学生のホームステイを受け入れるのも良いかもしれない。ゲストルームが世代間をつなぐ役目を果たしてくれるのではないかと思っている。

いつか、小さい家の主役は交代するだろう。孫が独立したら息子と嫁が小さな家を継いでくれる。またその次の世代も。

(2011年4月)